
皆伐とは山の木を一面に伐採すること。皆伐をした後の場所を皆伐跡地といい、伐跡(ばつあと)とも略します。管理次第でいろんな山をつくることができます。伐採または崩壊、風雪害などで森林が失われた後、再び森林に戻っていくことを森林の「更新」といいます。
天然更新

伐跡をそのまま放置しておくと、気候や立地条件、周囲の植物や動物などの状況に応じて様々な山になります。人の手を入れずに育った森林を天然林といいます。
人工更新

伐跡に種を蒔いたり木を植えて育てた森林を人工林といいのます。スギ、ヒノキなら下刈り、枝打ち、間伐などを行いつつ、40年以上かけて材木をとるための木を育てます。
森林更新の問題点
〇「シダ山」化

ウラジロやコシダといったシダが林床に密生している人工林・天然林を皆伐した場合など、伐跡を放置しておいてもシダが繁茂するのみで、10~20年以上たってもほとんど森林に戻らないことがあります。このような見通しの良い山は、シカの食害を強く受けやすくなってしまう事もあり、放置したままでは森林の更新が困難です。
〇シカの食害
紀伊半島では1990年ころからシカの密度が異常に高まり、伐跡に苗木を植えても防護柵(ネット)などを設置しないと枝葉や新芽を食べられてしまい森林の更新がうまくいきません。しかし、ネットをしてもイノシシにより地面を掘って突破されたり台風で木が倒れてネットを押さえたりして、そこから角のないメスジカや子ジカが侵入するので、随時見回りや補修が必要です。
見回りは経済的に負担になるので十分に行われないことも多く、せっかく植えた苗木が再生不能になる例もみられます。天然更新地においても、シカが食べ残したシダやススキが繁茂して草原化したり、有毒のアセビなどが残され貧弱な疎林になるなど、シカの増えすぎは林業だけでなく、森林生態系全体にとって非常に大きな影響を与える問題となっています。
熊野の森をつくる会の活動
〇広葉樹の植林(林業)
スギ、ヒノキはすぐれた材料になりますが、それ以外の樹種もそれぞれに適した用途があることから、伐跡に広葉樹を植栽、育成する活動に取り組んでいます。広葉樹人工林を造成することにより、天然林伐採を抑制するとともに多様な樹種の植林による生態系の多様化を図ります。
〇草原化した伐跡の森林化

シダやススキ草原になってしまった伐跡の天然更新を助けるため、自生している若木は残し、周囲のシダやススキ、つる類を刈り払います。補助的に広葉樹を植栽し、少しずつ多様な植生を回復させて、再び森林に戻すことを目標にしています。